目次
予備知識とゴール
予備知識
ゴール
集合とは?
定義(集合)
範囲が明確なものの集まりを集合といいます。 ある対象 $a$ が集合 $A$ に属することを $a{\in}A$ と書いて、$a$ は $A$ の元であるといいます。
※元のことを要素と呼んている本もあります。
※$a$ が $A$ の元でないことを $a{\notin}A$ と書きます。
※この定義をみて「ものって何?」「属するってどういうこと?」という辺りが気になった方は
公理的集合論のZFCを論理記号抜きで解説をどうぞ。
「範囲が明確な」というのは「どんな対象に対しても、それが属するか属さないかを判定できる」ということです。 たとえば「100より大きな自然数」というのは集合になりますが、「大きな自然数」というのは集合にはなりません。
定義(等しい)
2つの集合 $A$ と $B$ があって、$A$ のどの元も $B$ に属していて、$B$ のどの元も $A$ に属しているとき、$A$ と $B$ は等しいと言い、$A=B$ と書きます。
※$A$ と $B$ が等しくないことを $A{\neq}B$ と書きます。
つまり、すべての元が等しいなら集合としても等しいということです。
集合には4通りの書き方があります。
定義(集合の書き方)
① 全ての元を $\{$ $\}$ の中に列挙する。
② 元の例を $\{$ $\}$の中に示して残りを「…」で省略する。
③ 変数の満たす条件を示して $\{$ 変数$\in$変域 | 条件 $\}$ という形で書く。
④ 変数に対する関数を示して $\{$ 関数 | 変数$\in$変域 $\}$ という形で書く。
※③や④は|の代わりに;を使って書くこともあります。
たとえば、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20を元に持つ集合を考えます。これを①の方法で書くと、
\begin{align} \{ 2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 18, 20 \} \end{align}
となります。②の方法で書くと、
\begin{align} \{ 2, 4, 6, \cdots, 20 \} \end{align}
となります。③の方法で書くと、
\begin{align} \{ x{\in}偶数 | xは2以上20以下 \} \end{align}
となります。④の方法で書くと、
\begin{align} \{ 2x | x{\in}5以下の自然数 \} \end{align}
となります。
①→②→③→④と進むにつれて表現できる集合の幅が広くなりますが、注意も必要です。
②の方法で書いても良いのは、省略されている元が明らかなときだけです。 たとえば $\{9,2,8,\cdots\}$ と書いてもどんな集合か分かりません。
③や④の方法で書いても良いのは変数の変域が集合のときだけです。 たとえば $\{ 2x | xは大きな数 \}$ と書いても変域が明確じゃないので集合になりません。
③や④の方法で書くとき、変域が明らかな場合は省略することがあります。 たとえば $x$ の変域が偶数なことが明らかな場合は、 $\{ x \in 偶数 | xは2以上20以下 \}$ と書く代わりに $\{ x | xは2以上20以下 \}$ や $\{ xは2以上20以下 \}$ と書くこともあります。
※③と④は似ていますが、③で書かれる集合は変数の変域内に必ず収まるのに対して、④で書かれる集合は変数の変域からはみ出す集合まで表現できるという大きな違いがあります。
空集合
元を持たない集合というのを考えます。
定義(空集合)
元を持たない集合、つまり $\{$ $\}$ を空集合といいます。空集合は $\varnothing$ とも書きます。
注意点としては、$\{$ $\}$ と $\{{\varnothing}\}$ は別の集合ということです。 つまり $\{$ $\}$ と $\{\{$ $\}\}$ は別の集合です。
部分集合
定義(部分集合)
集合 $A$ のどの元も集合 $B$ に属するとき、$A$ は $B$ の部分集合であるといい、$A{\subset}B$ または $B{\supset}A$ と書きます。 $A$ が $B$ の部分集合のとき、$B$ は $A$ を含むともいいいます。
※$A{\subset}B$ を $A{\subseteq}B$ と書いてある本もあります。 その場合は、$A{\subseteq}B$ かつ $A{\neq}B$ のときだけ $A{\subset}B$ と書いて区別することもあります。
たとえば、
\begin{align} A &= \{2,3,4\}, \br B &= \{1,2,3,4,5,6\} \end{align}
のとき、$A$ のどの元も $B$ に属するので、$A$ は $B$ の部分集合、つまり $A{\subset}B$ です。
部分集合には、反射律、推移律、反対称律という3つの大切な性質があります。 ひとつずつみていきましょう。 まずは反射律から。
定理(反射律)
どんな集合 $A$ についても、$A{\subset}A$ が成り立ちます。
これは、どんな集合も自分自身の部分集合になるということをいってます。 証明はこんな感じです。
証明(反射律)
$A$ のどんな元も $A$ の元なので、$A{\subset}A$ が成り立ちます。
あたり前すぎて逆に難しくみえますが、
定理(推移律)
どんな集合 $A$、$B$、$C$ についても、$A{\subset}B$ かつ $B{\subset}C$ ならば $A{\subset}C$ が成り立ちます。
証明(推移律)
$A{\subset}B$ かつ $B{\subset}C$ ならば、どんな元 $x$ についても
$x{\in}A \to x{\in}B$ かつ $x{\in}B \to x{\in}C$ が成り立つので、$x{\in}A \to x{\in}C$ が成り立ちます。
よって、$A{\subset}C$ が成り立ちます。
定理(反対称律)
どんな集合 $A$、$B$ についても、$A=B$ ならば $A{\subset}B$ かつ $B{\subset}A$ が成り立ちます。
逆に、$A{\subset}B$ かつ $B{\subset}A$ であれば $A=B$ が成り立ちます。
証明(反対称律)
まず、$A=B$ ならば、$A$ のどんな元 $x$ についても $x{\in}A \to x{\in}B$ が成り立つので、$A{\subset}B$ となります。 さらに、$B$ のどんな元 $x$ についても $x{\in}B \to x{\in}A$ が成り立つので、$B{\subset}A$ となります。
次に、$A{\subset}B$ かつ $B{\subset}A$ ならば、どんな元 $x$ についても $x{\in}A \to x{\in}B$ かつ $x{\in}B \to x{\in}A$ が成り立つので、$A=B$ となります。
全体集合
定義(全体集合)
ある集合の部分集合だけを考えるとき、その集合を全体集合といいます。
※全体集合を普遍集合という本もあります。
全体集合は $U$ や $V$ や $X$ で表すことが多いです。
べき集合
定義(べき集合)
集合 $A$ のすべての部分集合を元に持つ集合を $A$ の べき集合 といい $\mathcal{P}(A)$ と書きます。
※$\mathcal{P}(A)$ を $2^A$ と書く本もあります。
たとえば、
\begin{align} A=\{1,2,3\} \end{align}
とすると、
\begin{align} \varnothing &{\subset} A, \br \{1\} &{\subset} A, \br \{2\} &{\subset} A, \br \{3\} &{\subset} A, \br \{1,2\} &{\subset} A, \br \{2,3\} &{\subset} A, \br \{3,1\} &{\subset} A, \br A &{\subset} A \end{align}
なので、
\begin{align} \mathcal{P}(A)=\{{\varnothing}, \{1\}, \{2\}, \{3\}, \{1,2\}, \{2,3\}, \{3,1\},A\} \end{align}
となります。