目次
- 命題とは?
- 否定命題(Pでない)
- 連言命題(PかつQ)
- 選言命題(PまたはQ)
- 含意命題(PならばQ)
- 同値命題(PとQは同値)
- 恒真命題(トートロジー)
- 恒偽命題(矛盾)
- 全称命題(すべてのxについてP)
- 存在命題(あるxについてP)
- まとめ
命題とは?
命題とは?
命題とは、正しいか正しくないかを客観的に判別できる主張のことです。 数学に出てくる主張はすべて命題です。
- 正しいか正しくないかを客観的に判別できる主張を命題といいます。
- ある命題が正しいとき、その命題は真であるといい、正しくないときは偽であるといいます。
- 命題 $P$ が真のとき、$P$ が成り立つといいます。
※命題は $P$、$Q$、$R$ 辺りのアルファベッドで表すことが多いです。
たとえば、次の4つの主張を考えてみましょう。
- エベレストは富士山より高い。
- 富士山はエベレストより高い。
- エベレストは高い。
- エベレストは $x$ より高い。
1つめは正しい主張なので真の命題になります。
2つめは正しくない主張なので偽の命題になります。
3つめは比べる相手がいないので正しいか正くないか決まらず、命題にはなりません。
4つめは比べる相手によって正しいか正くないか変わってしまうので、命題にはなりません。
つまりこういうことです👇
- エベレストは富士山より高い。(真の命題)
- 富士山はエベレストより高い。(偽の命題)
- エベレストは高い。(命題じゃない)
- エベレストは $x$ より高い。(命題じゃない)
- 真の命題に1、偽の命題に0を割り当て、これを真理値といいます。
- すべての真理値のパターンを表にしたものを真理表といいます。
※真理値は1の代わりにT、0の代わりにFを割り当てることもあります。
たとえば「エベレストは富士山より高い」という真の命題の真理値は1、「富士山はエベレストより高い」という偽の命題の真理値は0です。 真理表の例はこのあとたくさん出てきます。
命題関数とは?
命題の一部を変数に置き換えたものを命題関数といいます。 命題関数を使うと表現の幅が格段に広がります。 まずは基本的な用語を確認しておきましょう。
- 不特定の対象を代表する文字を変数といいます。
- 変数に対応させることのできる対象を値といいます。
- 変数がとれる値の範囲を変域といいます。
- 変数に特定の値を対応させることを代入といいます。
※変数のことを変項、変域のことを対象領域ということもあります。
たとえば不特定の人間を代表する変数を $x$ とすると、 $x$ に対応させることのできる値としては「太郎」や「花子」などがあり、 $x$ の変域はすべての人間ということになります。
- 命題 $P$ の一部の名詞を変数 $x$ に置き換えたものを命題関数といい $P(x)$ と書きます。
- $P(x)$ から変数を除いた $P()$ の部分を $x$ の条件といいます。
- 命題関数 $P(x)$ に特定の値 $a$ を代入してできる命題 $P(a)$ が真のとき、値 $a$ は条件 $P()$ を満たすといいます。
命題関数は真偽が決まらないので命題ではありません。 命題関数を命題にするには変数に具体的な値を代入する必要があります。
たとえば、
太郎はネコが好き。
という命題の「太郎」を変数 $x$ に置き換えれば、
$x$ はネコが好き。
という命題関数ができます。 そして、たとえば変数 $x$ に値「花子」を代入すれば、
花子はネコが好き。
という命題ができます。 もし花子がネコ好きなら、値「花子」は条件「〜はネコが好き」を満たすということになります。
- 複数の名詞を変数に置き換えた命題関数 $P(x,y,\cdots )$ も考えることができます。
- ふたつ以上の変数 $x,y,\cdots$ の条件を、$x,y,\cdots$ の関係ということもあります。
※条件や関係をまとめて述語ということがあります。
たとえば、
太郎はネコが好き。
という命題の太郎を変数 $x$ に、ネコを変数 $y$ に置き換えれば、
$x$ は $y$ が好き。
という2変数の命題関数ができ、これは $x$ と $y$ の関係になります。
否定命題(Pでない)
ここからは、ある命題から新しい命題を作る方法を見ていきます。
命題 $P$ に対して、
- $P$ が真のときは偽
- $P$ が偽のときは真
となる命題を $P$ の否定命題といい、
\begin{align} \lnot P \end{align}
と書いて「$P$ でない」と読みます。
※ $\lnot P$ の代わりに ${\sim}P$ や $\overline{P}$ と書くこともあります。
$P$ の真理値が1のとき ${\lnot}P$ の真理値は0、$P$ の真理値が0のとき ${\lnot}P$ の真理値は1になるので、真理表を書くとこうなります。
$P$ | $\lnot P$ |
---|---|
1 | 0 |
0 | 1 |
日常用語の「でない」と全く同じ意味なので特に難しいポイントはないです。
たとえば命題 $P$ を
太郎はネコが好き。
とすると、その否定命題 $\lnot P$ は
太郎はネコが好きでない。
となります。 太郎がネコ好きなら $P$ は真で $\lnot P$ は偽となります。 太郎がネコ嫌いなら $P$ は偽で $\lnot P$ は真となります。
否定命題 $\lnot P$ の一部を変数 $x$ で置き換えると、命題関数 $\lnot P(x)$ になります。 たとえば、
太郎はネコが好きでない。
という否定命題 $\lnot P$ の太郎を変数 $x$ で置き換えた命題関数 $\lnot P(x)$ は、
$x$ はネコが好きでない。
となります。
連言命題(PかつQ)
ここからは、2つの命題を組み合わせて新しい命題を作る方法を見ていきます。
命題 $P$ と $Q$ に対して、
- $P$ が真で $Q$ も真のときは真
- $P$ が真で $Q$ が偽のときは偽
- $P$ が偽で $Q$ が真のときは偽
- $P$ が偽で $Q$ も偽のときは偽
となる命題を $P$ と $Q$ の連言命題といい、
\begin{align} P \land Q \end{align}
と書いて「$P$ かつ $Q$」と読みます。
今度はありえるパターンが全部で4通りなので、真理表も4行になります。
$P$ | $Q$ | $P \land Q$ |
---|---|---|
1 | 1 | 1 |
1 | 0 | 0 |
0 | 1 | 0 |
0 | 0 | 0 |
論理用語としての「かつ」も日常用語の「かつ」と同じ意味なので、難しいポイントは特にないです。
たとえば次の2つの命題
太郎はネコが好き。
太郎はイヌが好き。
の連言命題は、
太郎はネコもイヌも好き。
となります。
正確には「太郎はネコが好き、かつ、太郎はイヌが好き」ですが、実際には上のような自然な表現で書かれることが多いです。
$P \land Q$ は「$P$ そして $Q$」や「$P$ しかし $Q$」のように読むこともあります。 日常用語では「かつ」と「そして」と「しかし」はニュアンスが全然違いますが、論理的には全く同じ意味になります。
たとえば $P \land (\lnot Q)$ は正確には「太郎はネコが好き、かつ、太郎はイヌが好きでない」ですが、 実際には「太郎はネコが好き、しかし、太郎はイヌが好きでない」と読んだり、 もっと自然に「太郎はネコが好きだけどイヌは好きじゃない」と読んだりします。
大切なことは、言葉で考えていて「あれ?」ってなったときに、いつでも記号に直して正しい意味を確認できるようにしておくことです。
連言命題 $P \land Q$ の一部を変数 $x$ で置き換えると、命題関数 $P(x) \land Q(x)$ になります。
選言命題(PまたはQ)
2つの命題を組み合わせて新しい命題を作る方法の2つめです。
命題 $P$ と $Q$ に対して、
- $P$ が真で $Q$ も真のときは真
- $P$ が真で $Q$ が偽のときは真
- $P$ が偽で $Q$ が真のときは真
- $P$ が偽で $Q$ も偽のときは偽
となる命題を $P$ と $Q$ の選言命題といい、
\begin{align} P \lor Q \end{align}
と書いて「$P$ または $Q$」と読みます。
※ $P \lor Q$ は「$P$ か $Q$」や「$P$ あるいは $Q$」のように読むこともあります。
真理表を書くとこうなります。
$P$ | $Q$ | $P \land Q$ |
---|---|---|
1 | 1 | 1 |
1 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
0 | 0 | 0 |
これは日常用語の「または」とは違う点があるので注意が必要です。
たとえば、命題 $P$、$Q$ をそれぞれ
太郎はネコが好き。
太郎はイヌが好き。
とした場合、命題 $P \lor Q$ は
太郎はネコまたはイヌが好き。
となります。
この命題が真の場合、日常会話では、太郎はネコかイヌかどちらか一方が好きだということになりますが、論理的には両方とも好きな場合でも真になるので注意しましょう。
選言命題 $P \land Q$ の一部を変数 $x$ で置き換えると、命題関数 $P(x) \lor Q(x)$ になります。
含意命題(PならばQ)
2つの命題を組み合わせて新しい命題を作る方法の3つめです。
命題 $P$ と $Q$ に対して、
- $P$ が真で $Q$ も真のときは真
- $P$ が真で $Q$ が偽のときは偽
- $P$ が偽で $Q$ が真のときは真
- $P$ が偽で $Q$ も偽のときは真
となる命題を前件 $P$ と 後件 $Q$ の含意命題といい、
\begin{align} P \to Q \end{align}
と書いて「$P$ ならば $Q$」と読みます。
※ $P \to Q$ は「$P$ のとき $Q$」と読むこともあります。
真理表を書くとこうなります👇
$P$ | $Q$ | $P \to Q$ |
---|---|---|
1 | 1 | 1 |
1 | 0 | 0 |
0 | 1 | 1 |
0 | 0 | 1 |
これも日常会話での「ならば」と違うところがあるので注意が必要です。
たとえば、前件が
太郎はネコを飼ってる。
で、後件が
太郎はネコが好き。
のとき、含意命題は
太郎がネコを飼ってるならばネコが好き。
となります。
この命題が偽になるのは、ネコを飼ってるのにネコが好きじゃない場合だけです。
ネコを飼ってない場合は、ネコを好きでいようがいまいが真になるので注意しましょう。
含意命題$P \to Q$ に対して、命題 $Q \to P$ を逆、 $({\lnot} Q) \to ({\lnot} P)$ を対偶といいます。
※もちろん反対から見れば $P \to Q$ は $Q \to P$ の逆、 $(\lnot Q) \to (\lnot P)$ の対偶です。
たとえば先ほどの、
太郎がネコを飼ってるならばネコが好き。
の逆は、
太郎がネコ好きならばネコを飼ってる。
になります。対偶は、
太郎がネコ好きでないならばネコを飼ってない。
になります。
注意点としては、元の命題と逆の命題は真偽が一致するとは限らないということです。
一方で、対偶はもとの命題と真偽が一致します。
これは真理表を書くと確認できます👇
$P$ | $Q$ | $P{\to}Q$ | $Q{\to}P$ | $({\lnot}Q){\to}({\lnot}P)$ |
---|---|---|---|---|
1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
0 | 1 | 1 | 0 | 1 |
0 | 0 | 1 | 1 | 1 |
含意命題 $P \to Q$ の一部を変数 $x$ で置き換えると、命題関数 $P(x) \to Q(x)$ になります。
同値命題(PとQは同値)
2つの命題を組み合わせて新しい命題を作る方法の4つめです。これで最後です。
命題 $P$ と $Q$ に対して、
- $P$ が真で $Q$ も真のときは真
- $P$ が真で $Q$ が偽のときは偽
- $P$ が偽で $Q$ が真のときは偽
- $P$ が偽で $Q$ も偽のときは真
となる命題を $P$ と $Q$ の同値命題といい、
\begin{align} P \leftrightarrow Q \end{align}
と書いて「$P$ と $Q$ は同値」と読みます。
※ $P{\leftrightarrow}Q$ は「$P$ と $Q$ は同値」とも読みます。
真理表を書くとこうなります👇
$P$ | $Q$ | $P \leftrightarrow Q$ |
---|---|---|
1 | 1 | 1 |
1 | 0 | 0 |
0 | 1 | 0 |
0 | 0 | 1 |
つまり同値命題は、元の命題の真理値が一致するときは真、一致しないときは偽になる命題ということです。
たとえば次の2つの命題
太郎はネコが好き。
太郎はネコを飼ってる。
の同値命題は
太郎がネコ好きなことと、太郎がネコを飼ってることは同値。
となります。
同値命題 $P \leftrightarrow Q$ の一部を変数 $x$ で置き換えると、命題関数 $P(x) \leftrightarrow Q(x)$ になります。
恒真命題(トートロジー)
次は、恒真命題と恒偽命題という2つの特殊な命題を紹介します。まずは恒真命題から。
恒に真である命題を恒真命題またはトートロジーといい $\top$ と書きます。
たとえば選言命題 $P \lor (\lnot P)$ は、命題 $P$ の真偽に関係なく恒に真になります。
$P$ | $\lnot P$ | $P \lor (\lnot P)$ |
---|---|---|
1 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
たとえば「太郎はネコが好きかネコが好きでない」という命題は、彼がネコ好きであろうがなかろうが恒に真になります。
恒真命題はこの他にも無数にありますが、それらは証明を進めるのにとても大切です。 詳しくは証明とは?で解説しています。
恒偽命題(矛盾)
次は恒偽命題です。
恒に偽である命題を恒偽命題または矛盾といい $\bot$ と書きます。
たとえば連言命題 $P \land (\lnot P)$ は、命題 $P$ の真理値に関係なく恒に偽になります。
$P$ | $\lnot P$ | $P \land (\lnot P)$ |
---|---|---|
1 | 0 | 0 |
0 | 1 | 0 |
たとえば「太郎はネコが好きでネコが好きでない」という命題は、彼がネコ好きであろうがなかろうが恒に偽になります。
恒偽命題は特に背理法という証明法を使うときに役に立ちます。 詳しくは証明とは?で解説しています。
全称命題(すべてのxについてP)
命題関数を元にして新しい命題を作る方法を2つ紹介します。 まずは連言命題のバージョンアップ版である全称命題から。
述語 $P(x)$ の変数 $x$ の変域が $a, b, c, \cdots$ のとき、命題
\begin{align} P(a) \land P(b) \land P(c) \land \cdots \end{align}
を全称命題といい、
\begin{align} \forall x P(x) \end{align}
と書いて、
すべての $x$ について $P(x)$
と読みます。
※ 「すべての」と読む代わりに「どんな」や「任意の」と読むこともあります。
日常的には「すべての」と「どんな」ではニュアンスが違いますが、論理的には全く同じ意味になります。
※この「$\cdots$」という書き方はちょっと曖昧ですが、ここを厳密にやろうとすると、数学のための論理というよりも、論理そのものを研究する数理論理学になってしまいます。
気になる方は「自然演繹」などのキーワードで調べてみて下さい。
ふわっと紹介すると、$\forall$ の意味を直接決めるのではなく、
$\forall$ について成り立つルールを決めることによって、間接的に $\forall$ の意味を決める、みたいなことをします。
たとえば変数 $x$ の変域が「人間」のとき、
$x$ はネコが好き。
という命題関数の全称命題は、
すべての $x$ はネコが好き。
となります。もっと自然な言葉で表すと、
すべての人間はネコが好き。
みたいな感じです。
全称命題は変域が変わると真偽が変わることがあります。 たとえば $x$ の変域が「人間」のときは、先ほどの命題は人間の中に一人でもネコ嫌いがいればいれば偽になりますが、 変域が「太郎くんの家族」だったら、太郎くんの家族が全員ネコ好きなら真になります。
実は変域自体を命題関数に組み込むことまできます。 たとえば、太郎はネコが好きという命題は 数学に出てくる全称命題は、ほとんど例外なく、
太郎はネコが好き 太郎は人間 xはネコが好き xが太郎ならばxはネコが好き\begin{align} \forall x \ ( P(x) \to Q(x) ) \end{align}
という形をしています。これはもちろん、
\begin{align} ( P(x_1) \to Q(x_1) ) \land ( P(x_2) \to Q(x_2) ) \land \cdots \end{align}
という意味です。 これは「すべての $x$ について $P(x)$ ならば $Q(x)$」 と読めますが、実際にはもっと自然に 「すべての $P(x)$ は $Q(x)$」 と読むことが多いです。
たとえば $P(x)$ を、
$x$ は人である。
とし、$Q(x)$ を、
$x$ はネコが好き。
とすると、$\forall x (P(x){\to}Q(x))$ は、
すべての人はネコが好き。
となります。
存在命題(あるxについてP)
命題関数を元にして新しい命題を作る方法を2つめは、選言命題のバージョンアップ版である存在命題です。
述語 $P(x)$ の変数 $x$ の変域が $a, b, c, \cdots$ のとき、命題
\begin{align} P(a) \lor P(b) \lor P(c) \lor \cdots \end{align}
を存在命題といい、
$\exists x P(x)$
と書いて「ある $x$ について $P(x)$」と読みます。
※ $\exists x P(x)$ は 「$P(x)$ となる $x$ が存在する」とも読みます。
※存在命題も全称命題と同じで、厳密に議論するには数理論理学に踏み込む必要があります。
たとえば変数 $x$ の変域が「人間」のとき、
$x$ はネコが好き。
という命題関数の存在命題は、
ある $x$ はネコが好き。
となります。もっと自然な言葉で表すと、
ある人間はネコが好き。
みたいな感じです。人間の中に一人でもネコ好きがいれば真になるので、この命題は真です。
実際に数学に出てくる存在命題は、ほとんど例外なく、
\begin{align} \exists x \ ( P(x) \land Q(x) ) \end{align}
という形をしています。もれはもちろん、
\begin{align} ( P(x_1) \land Q(x_1) ) \lor ( P(x_2) \land Q(x_2) ) \lor \cdots \end{align}
という意味です。 これは「ある $x$ について $P(x)$ かつ $Q(x)$」と読みますが、実際にはもっと自然に「ある $P(x)$ は $Q(x)$」と読むことが多いです。
たとえば $P(x)$ を、
$x$ は人である。
$Q(x)$ を、
$x$ はネコが好き。
とすると、$\exists x (P(x){\land}Q(x))$ は、
ある人はネコが好き。
となります。
$\forall x$ や $\exists x$ を量化子といい、命題関数に量化子を付けて命題にすることを量化といいます。
量化された変数を束縛変数といい、量化されてない変数を自由変数と読んで区別することがあります。
2変数の命題関数 $P(x,y)$ も量化することができます。たとえば $\forall x \ \exists y P(x, y)$ は、
\begin{align} \forall x ( P(x, y_1) \lor P(x, y_2) \lor \cdots ) \end{align}
という意味で、もっと詳しく書くと、
\begin{align} ( P(x_1, y_1) \lor P(x_1, y_2) \lor \cdots ) \land ( P(x_2, y_1) \lor P(x_2, y_2) \lor \cdots ) \land \cdots \end{align}
となります。
たとえば $P(x,y)$ を「$x$ は $y$ が好き」とし、$x$ の変域を「人間」、$y$ の変域を「動物」とすると、量化の方法は全部で8通りあります。
記号 | 意味 |
---|---|
$\forall x \ \forall y \ P(x,y)$ | すべての人間はすべての動物が好き |
$\forall y \ \forall x \ P(x,y)$ | すべての動物はすべての人間に好かれている |
$\exists x \ \forall y \ P(x,y)$ | ある人間はすべての動物が好き |
$\forall y \ \exists x \ P(x,y)$ | すべての動物はある人間に好かれている |
$\exists y \ \forall x \ P(x,y)$ | ある動物はすべての人間に好かれている |
$\forall x \ \exists y \ P(x,y)$ | すべての人間には好きな動物がいる |
$\exists x \ \exists y \ P(x,y)$ | ある人はある動物が好き |
$\exists y \ \exists x \ P(x,y)$ | ある動物はある人間に好かれている |
$\forall$ と $\exists$ が混ざっているときは、量化する順番によって全く意味が変わってしまうので注意が必要です。
3変数以上の命題関数も同じように量化して命題にすることができます。
まとめ
まず用語をまとめておきましょう。
用語 | 意味 |
---|---|
真 | 正しいこと |
偽 | 正しくないこと |
命題 | 真偽が定まる文 |
変数 | 不特定の対象を代表する文字 |
値 | 変数に対応させることのできる対象 |
変域 | 変数がとれる値の範囲 |
代入 | 変数に値を対応させること |
述語 | 命題の一部の名詞を変数に置き換えたもの |
条件 | 変数がひとつの述語 |
関係 | 変数が複数ある述語 |
論理記号もまとめておきましょう。
記号 | 名前 | 読み方 |
---|---|---|
$\top$ | 恒真命題 | トートロジー |
$\bot$ | 恒偽命題 | 矛盾 |
$\lnot P$ | 否定命題 | $P$ でない |
$P \land Q$ | 連言命題 | $P$ かつ $Q$ |
$P \lor Q$ | 選言命題 | $P$ または $Q$ |
$P \to Q$ | 含意命題 | $P$ ならば $Q$ |
$P \leftrightarrow Q$ | 同値命題 | $P$ のときのみ $Q$ |
$\forall x P(x)$ | 全称命題 | すべての $x$ について $P(x)$ |
$\exists x P(x)$ | 存在命題 | ある $x$ について $P(x)$ |
命題をつなぐ5つの記号 $\lnot$、$\land$、$\lor$、$\to$、$\leftrightarrow$ には優先順位があります。 優先順位があるおかげで、カッコを省略することができます。 これは数の計算で $+$ より $\times$ を優先するのに似ています。
論理記号を優先順位の高い順に並べるとこうなります。
- $\lnot$
- $\land$ と $\lor$
- $\to$
- $\leftrightarrow$
たとえば、$\lnot P \land Q$ は $(\lnot P) \land Q$ の意味で、$\lnot (P \land Q)$ ではありません。 言葉で「PかつQでない」といった場合は曖昧になってしまうので「Pかつ、Qでない」や「PかつQ、でない」のように「、」を入れて区別することがあります。
$P \land Q \to R$ は $(P \land Q) \to R$ の意味で、$P \land (Q \to R)$ ではありません。 これも「PかつQならばR」というと曖昧なので、「PかつQ、ならばR」や「Pかつ、QならばR」のように区別することがあります。
もっと紛らわしいのは $P \to Q \leftrightarrow R$ で、これは $(P \to Q) \leftrightarrow R$ の意味で、$P \to (Q \leftrightarrow R)$ ではありません。